マレイ・ペライア ピアノリサイタル

 今やアメリカを代表するピアニストとなったマレイ・ペライアは東京での2回のリサイタル、10月28日の浜離宮朝日ホール、10月31日のサントリーホールのみとなった。サントリーホールの方を聴いた。

 まず、ハイドン、アンダンテと変奏曲、Hob.ⅩⅤ.Ⅱ-6、ハイドン晩年の作で味わい深い小品をなんのてらいもなく、見事に表現した。モーツァルト、ソナタ第8番、K.310も見事な演奏だった。ブラームスではバラード、Op.118-3、インテルメッツォ、Op.119-3,Op.119-2,Op.118-2は晩年のブラームスの侘しさ、寂しさ、じっくり歌いあげた抒情性、激しさを描きだしていた。ベートーヴェン、ソナタ第29番、Op.106「ハンマークラヴィーア」は、ペライアがドイツ、ヘンレ社の新版編纂に取り組んでいることもあってか、ベートーヴェンの音楽を真摯に伝えんとした名演であった。

 アメリカでのベートーヴェン研究も盛んで、ピアニスト、ロバート・タウブがベートーヴェン、ソナタに関する著書を出し、全集のCDもある。ネブラスカ大学などでも研究が進んできている。ペライアの取り組みもこうした背景あってのことだと見ている。ペライアが取り組んでいるヘンレの新版がどんどん発売されることを望みたい。