新国立劇場 団伊玖磨「夕鶴」

 新国立劇場オペラ公演、2015年/2016年シーズン最後を飾る演目は、日本を代表する作曲家の一人、団伊玖磨(1924-2001)の名作「夕鶴」である。

 つうは澤畑恵美、与ひょうは小原啓楼、惣どは峰茂樹、運ずは谷友博。谷が藤原歌劇団、澤畑、小原、峰は二期会からの出演である。世田谷ジュニア合唱団、東京フィルハーモニー管弦楽団、指揮は大友直人であった。

 大友は団の音楽を自らのものとして手堅くまとめ、民話劇に基づく悲劇性を導き出した。世田谷ジュニア合唱団も好演で、村の子どもたちの素朴さを引き出した。

 罠にはまった鶴を助けた与ひょうは、その恩返しに鶴から人間の女性に身を変えたつうを妻として幸せな毎日を送る。しかし、つうが織った布で一儲けしようと企む惣ど、運ずに騙された挙句、最愛の妻となったつうと別れることになる。

澤畑が見事なつうを演じ、惣ど、運ずに騙される与ひょうへの思い、与ひょうに機屋を見られて別れることとなった悲しみを表出していた。小原の与ひょうは純朴さ、惣ど、運ずたちに騙されていく心理描写が素晴らしい。つうと別れることになっても、一途に愛する心を表現していた。峰の惣どは悪賢さ、与ひょうへの罪悪感といった性格描写が巧みに描かれていた。谷の運ずは小心さを表出していた。

 栗山民也の演出は雪国の純朴さを描きだした舞台作りが見もので、ささやかな幸せがお金によって崩れてしまう悲劇を暗示していた。これが高校生のためのオペラ鑑賞教室としても上演される予定である。日本のオペラの名作が多くの高校生に感動をもたらすことを願いたい。

 また、日本のオペラ作品上演にも積極的に取り組んでほしい。団の作品のみならず、これはと思う作品をどしどし取り上げてほしい。